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港区学びの達人プロジェクト

2023 ABLプログラム「アートって必要?」(全3回)

プログラム概要

「人の役に立つことがしたい」「社会の役に立つ仕事に就きたい」「これは役に立たないからやらない」など、何かの「役に立つ」ことが重要視されています。

「役に立つ」とはどういうことなのでしょうか。「役に立つ」はだれが決めるのでしょうか。

学校の勉強の中でも、算数/数学、国語、英語は将来の役に立つから勉強するけど、図工/美術や音楽、体育は…という人もいるかもしれません。でも、アート(芸術)は役に立たないからやらなくてよい?アートは不必要なものでしょうか?

今回のプログラムでは、アート分野の職業に就いている大人たちとともに、「アートって必要?」を問い直します。「必要!」と考える人も「いらないんじゃないかな」と考える人も、それぞれにまちがいではありません。みんなの意見を聞いて、新学期に向けて自分の「好き」を見つめなおしてみましょう。

実施スケジュール

実施日時 2024年3月13日〜2024年3月26日(全3回)
会場 国立新美術館・オンライン・みなと科学館
参加者 小学4年生から中学2年生 24名

第1回:アートを見に行こう!

実施概要

実施日時 2024年3月13日(水)
会場 国立新美術館
参加者 小学4年生から中学2年生 20名   

活動の様子

今回のテーマは「アート」。人によってはとても身近にある、人によってはもしかしたら少しとっつきにくく高尚なアートは私たちにとってどんな存在なのでしょう。

まずは、開催中の「アンリ・マティス展」の鑑賞をし、アートに触れてみることからスタートです。マティスおじさんについて、国立新美術館の教育普及室長の吉澤菜摘先生から「どんな人なのか」「なぜアートを始めたのか」「どんな作品を残したのか」ちょっとだけレクチャーをしてもらいました。代表作をいくつか見せてもらうと、実物を見たくなります。

そして、いざ、展示室へ! 「自分にとって“親しみやすい”作品を探してくる」ことをミッションとして、展示室を回りました。子どもたちは、展示室の中で、思い思いに作品を鑑賞します。美術館のスタッフさんに質問したり、一つ一つ順番に観たり、何度も同じ作品に戻って観たり。鑑賞時間は十分でなかったようで、子どもたちからも「もうすこし観たい!」とリクエストの声があがりました。30分程度の鑑賞後、今回の展示の代表の一つである「花と果実」の大きな絵の前で集合し、研修室に戻りました。

戻ってから、それぞれの「親しみやすい」と思った作品を共有しました。選ばれた作品は千差万別で、「親しみやすい」の解釈が子どもによって違いました。他の人が「いいな」と思ったという作品については、もう一度自分の目で確かめに行きたくなりますね。

 最後に「アートって必要?」をそれぞれに考え、次回の宿題「アートって必要?を自分で考え、周りの人にもインタビューしてくる」を伝え、終了となりました。

「親しみやすい」作品について書いた子どものメモ
「親しみやすい」を一緒に考えている様子

第2回:アートって必要?社会の中の不必要なモノとは?

実施概要

実施日時 2024年3月21日(木)
会場 オンライン
参加者 小学4年生から中学2年生 13名

活動の様子

まずは、国立新美術館の吉澤菜摘先生と前回の「マティス展」について振り返りました。それぞれの「よかった」「好き」「親しみやすかった」と言った作品を冊子を広げながら、マティスのどの年代にどのようにつくられたものなのか、一人一人に解説をしてくれました。たくさんの色が使われている作品、色はなく鉛筆のデッサン画、切り絵など、子どもたちそれぞれの「好き」「親しみやすい」を紹介し合いました。

その後、宿題も共有しました。「アートって必要?」を周りの人にインタビューし、自分で考えた結果を発表しました。アートは心を豊かにしてくれるもの、癒しであるために必要だと考える子どもたちがほとんど。講師から「なくても生きていける、不必要だっていう考えはない?」と投げかけても、賛同者はいません。身の回りにある音楽、今日身につけている服、眼鏡、ボールペンやペットボトルまで、すべてになんらかのデザインが入っていてそれがアートになっていること、アートは「必要かどうか」ではなく、すでに生活に入り込んでいるということを確認しました。

「この世に不必要なものってある?例えば学校の勉強は?」の講師から問いに、学びの達人の子どもたちは、学校の勉強は「不必要」と考える子は一人もいませんでした…!主要5教科だけでなく、美術も音楽も体育も「不必要ではない」との意見。「では不必要なものはなに?」と聞いてみると「プラスチック(環境を汚染するから)」「人(環境を破壊するから)」など、SDGsの考えに基づいた回答があがります。プラスチックのように安価で便利で生活に欠かせないものが「不必要」であるというのは興味深いです。どんなものも誰かにとっては「必要」かもしれないけど、他の誰かにとっては「不必要」「害悪」なのかもしれないですね。

最後に、将来の仕事について考えました。「必要か不必要か、役に立つか立たないか、ということで仕事を選ぶのではなく、今は自分の『好きなこと』を大事に将来を見るとよいですね」と講師からエールが送られます。そして「好き」を仕事にした切り絵作家のtantanさん(https://www.tantan.tokyo/)が紹介されました。tantanさんは港区出身、港区在住のみんなの先輩で、切り絵のアーティストとして活躍されています。次回のプログラムでは国立新美術館で鑑賞したマティスの切り絵をヒントに、 tantanさんとともに切り絵アーティストを目指します。

前回の「親しみやすい」作品を振り返っている様子
参加した子どもが紹介した身の回りのアート

第3回:きみもアーティストになろう!

実施概要

実施日時 2024年3月26日(火)
会場 みなと科学館
参加者 小学4年生から中学1年生 17名

活動の様子

第1回でアートを鑑賞し、第2回でアートについて考え、3回目の今回ではいよいよアートをつくり出します。

 今回の講師、港区出身・港区在住の切り絵作家タンタン先生のご紹介からスタート。タンタンさんの作品がいくつも展示された科学館の実験室が、今日だけは美術館みたいです。そんな空間で、今回のテーマ「きみもアーティストになろう!」がはじまりました。タンタン先生が見本を見せてくださり、台紙に貼り付けるモチーフになるものをそれぞれが自由に考えて切り絵を作る時間を持ちました。きれいな紙をバラバラと切り抜いたり、雑誌から形を切り抜いたり、☆や〇のスタンプ型で切り抜いたり、折り切り絵をつくったり、思い思いに切り抜きます。「自由に」という指示は一見簡単なようで、モチーフが設定される場合よりも何をしてよいのかわからず難しいことが多いです。しかし、子どもたちはタンタン先生がもってきてくださった色とりどりの紙や雑誌から着想を得て、思い思いに没頭していました。もっと時間がほしい、もっとやりたいという中で、他のみんながどんな作品を作ったのかを共有しました。タンタン先生が「未完成であることもアート」と背中を押してくださって、それぞれが自分の作品とそのコンセプト、工夫したところなどを発表しました。一つ一つに個性やオリジナルのストーリーがもりこまれていてタンタン先生もびっくりの連続です。「こういうところがすばらしい」とのタンタン先生のコメントも励みになりました。

最後に「好き」を仕事にしたタンタン先生にインタビューをしました。子どもたちからは「数あるアートの中からどうして切り絵を選んだのか」「切り絵以外に好きなアートはありますか?」などの質問がでました。「どんな子ども時代でしたか?」という質問には、学校についたら裸足でかけまわり、先生に捕獲されるところからスタートする子ども時代だったけど、中学のときに切り絵に出会って没頭することで、自分の中のエネルギーの出し方がわかって落ち着いてきたという子育てのヒントになりそうなお話もありました。「好きを仕事にすることの楽しさと苦労は?」からは、苦労することで新しいステージにすすめたり視野が広がったりするお話もしていただきました。また、「作品のお値段は?」もこっそり教えていただきました。みんなが「こちらの方が価格が高い」と思った作品がそうでもなかったりするその背景には、作品をつくるのにかかった時間だけでなく、その作品にかける思いやこのアーティストでしかできない技術があることを知りました。「アートってなんですか?」とお聞きしたら「必要とか不必要ではなく、それがなければ生きていても意味がない」と話されました。

 役に立つ、立たないではなく、「これが好き」「これをしていることが幸せ」と思える活動に出会えることはとても幸運なことです。子どもたちには、これからの1年だけでなく10年先、20年先の大人になっても、自分の「好き」を見つけて大事にして、幸せに生きていく「学びの達人」になることを約束してもらい、プログラムは終了しました。

切り絵のモチーフを自由に選んでいる子どもたち
講師のタンタンさんにアートの価値についてレクチャーを受ける子どもたち

参加した子どもたちからの感想(一部抜粋)

・アートが必要かは人によってちがうんだなと思った。アートは自分の考えやしゅみを気にせず出せるから個人的には必要だと思う(小4・女子)

・ちぎりえが楽しかった。アートは自分の考えを伝えることができるから必要だと思う(小4・女子)

・アートは、言葉を必要とせずに自分の気持ちを伝えられるものだと思った(小6・男子)

・アートもいろいろあって、それぞれ深い意味があることを知った。普通の生活を豊かにし、彩ってくれるアートはやっぱり必要だと思う(小6・女子)

・アートはただ絵を描くことではないことを知った。人の意見がちがっていて、そこがおもしろいと思った(小6・男子)

・プロの人の考え方を聞けたことが心に残った。アートがなかったら魂を抜かれてしまう人がいることに衝撃を受けた(中1・男子)

感想をスライドで提出してくれる参加者もいました。

プログラム後にアートについての学びが進んでいる様子

保護者からの感想(一部抜粋)

・宿題では、自分からお友達に連絡をとってインタビューをしていました。 アートが必要か?は受講する前から「必要!」と言っていましたが、先生や参加者の方々、お友達の色んな意見が聞けたことで、思うところがあったようです。 「私は、どんな理由を聞いても、必要!という意見は変わらない」とキッパリといっていたのが親子としては印象的でした。 普段の学びとは違った体験をできてこと、とても感謝しております。ありがとうございました。 これからも、子どもの可能性を広げる企画を期待しています。また、学校生活の中で、このままような体験を組み込んでもらえるととても嬉しいです。(小4女子・保護者)

・3回のプログラムで普段出来ない学びの時間をありがとうございました。
子どもは作品作りや芸術が好きなので、楽しかったと喜んでおりました。
また参加させていただきます。ありがとうございます。(小5男子・保護者)

・自分の意見を他の人に発表し、他の人の意見も聞いて、また話し合う。能動的な学びの機会で素晴らしい試みだと思いました。自分の頭の中になんとなく考えはあるけれど、言葉でどう表したらよいかわからない、そんな子供達の考えを引き出してくれる時間になったと思います。アートが好きなので今回参加させてもらいましたが、他にも興味のあるテーマ(お菓子作りや科学の実験、音楽など)の学びの達人プロジェクトがあればぜひやってみたいとのことです。今回は有意義なプロジェクトに参加させていただきありがとうございました!(小5女子・保護者)

・1回目では、美術館に行けてとても刺激をいただいてきたようで、「美術館とても楽しい」と目を輝かせて帰宅しました。 自分に親しみやすい作品を選んでくるという課題は、初めて考えるような選択で、 新たな視点がもてて、良い経験になりました。 3回目は、タンタンさんがどうして切り絵が好きなのかなど、タンタンがその道を選択したお話しが良かったと言っていました。 また、自分の作品を褒められて嬉しそうでした。 自分の芸術に対する考えというのは、 普段考えもしないことだから、 普段考えもしないことを経験できて良かったと思います。 娘の作品をみて、飼い猫が娘の心の支えになっていることがよく分かりました。 芸術は心の奥底を表現できる大切なものだと改めて思いました。(小5女子・保護者)

・いつも切り込み方が鋭く、それなのに自由で、毎回楽しく参加させていただいております。(小4女子・保護者)

協力

国立新美術館 

切り絵作家・デザイナー タンタン

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