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港区学びの達人プロジェクト

2023 ABLプログラム「昆虫とコミュニケーション」(全3回)

プログラムのねらい

カブトムシ,クワガタ,オオムラサキ…昆虫採集は今も昔も夏休みの楽しみの一つではないでしょうか。ではみなさん,どうやったらうまく昆虫を採集することができるか知っていますか?今回のプログラムでは,昆虫の専門家をお招きしてコツを伝授してもらいます。虫をとるために必要なのは,実は昆虫の知識だけではないのです。

大都会の港区にも昆虫はたくさん。今年の夏は,昆虫を知り,自分を知り,頭と体をたくさん使って昆虫とコミュニケーションしてみましょう。

実施概要

実施日時2023年7月26日〜8月21日(全3回)
会場みなと科学館周辺・青松寺・オンライン・台場公園
参加者小学4年生から中学2年生 18名

第1回:虫とコミュニケーション

実施概要

実施日時2023年7月26日(水)
会場みなと科学館周辺・青松寺
参加者小学4年生から中学2年生 13名   

活動の様子

今回のプログラムのテーマは「昆虫と(〇〇と)コミュニケーション」。

港区内でも昆虫とコミュニケーションはできるのでしょうか。子ども達は, 万全の準備で科学館に集合してきました。今日のコミュニケーションの場は,科学館の近所にある青松寺。Google Mapで場所と敷地内の様子を確認し,ゲスト講師に来てくれた昆虫(アジア蛾)の専門家・小林真大(こばやしまお)先生とともに,青松寺へ出発。道すがら,セミの鳴き声が聞こえてきては採集に励むなどなかなか進みません。

青松寺でも,それぞれが好きな場所で思い思いに採集していました。「昆虫と〇〇とコミュニケーション」の〇〇はいろいろなものが入ります。例えば〇〇=専門家。専門家の話を聞くだけではなく,昆虫採集のときの動きを見てみようと伝えています。目の前の昆虫に集中している子どもも,ふと小林先生の動きに目をとめて何か思うところがあったようです。

科学館にもどって休憩,それぞれの成果をみながら,小林先生の日頃のお話を聞きました。小林先生の拠点であるラオスでの昆虫採集の様子,たくさんのきれいな蛾の写真,そして,小林先生の昆虫採集の秘訣である「ブレイクダンス」のお話など。疲れているはずの子どもたちも真剣に聞き入っていました。

小林先生から教えていただいた昆虫採集や,それ以外の生活すべてにかかわっている「ダンス=自分の身体を思い通りに動かす」ということから,今回の宿題は「(昆虫採集のために)自分とコミュニケーション」。今日から次のプログラムまで,睡眠時間と,自分の身体,そして心の調子をデータとして収集してくることを宿題として出しました。子どもたちは自分とどんなコミュニケーションをしてくるのでしょうか。

青松寺で虫採りをする子ども達
小林先生からラオスの様子を聞く子ども達

第2回:自分とのコミュニケーション

実施概要

実施日時2023年8月3日(木)
会場オンライン
参加者小学4年生から中学2年生 15名

活動の様子

前回の青松寺での昆虫採集に引き続いて,昆虫採集をした参加者のみなさんから昆虫を見せ合いました。自宅で飼育しているニジイロクワガタ,カブトムシ,青松寺で採集したカマキリなど,それぞれが大事にしている昆虫をみせてくれます。昆虫博士が多く,虫を眺めているだけでどんどん時間が過ぎていきます。

その後,前回の宿題「身体と心のデータを収集」共有しました。昆虫採集を一緒にした小林真大先生から「身体の動きはすべてにつながっている」と昆虫採集のコツを伝授された子どもたち。1週間,お天気とその日のイベント,体と心の調子を10点満点で記録し,振り返ってみました。一人旅に出たり,お祭りに行ったり,それぞれに夏休みを楽しんでいるようでした。ただ,その中でも少し変動があって,何か大きなイベントがあった次の日は少しだけ身体の調子が落ちているところもみられました。やはり,心と身体は連動しているのでしょうか。「なんだか調子悪いな」「いやな気持ちだな」と感じたときに,睡眠時間やおなかのすき具合,お天気などの要素がかかわっていることもあります。自分の心と身体とコミュニケーションする材料として,さまざまなデータを集めて振り返ることも大事です。Apple Watchをはじめとして,気圧による頭痛の予測や食べ物の記録などができるアプリなど,現代のテクノロジーを紹介しました。

また,心と身体動作がつながっているという研究の紹介をしました。「腕を大きくまわすと創造的なアイデアがわいてくる」という研究知見をみんなで試してみよう!ということで,腕を大きくまわして「新しいお米の名前を考える」という課題にみんなで挑戦しました。それぞれが独創的なお米の名前を発明していました。

最後に,次回の講師としてきてくださるラオスのCilil先生について紹介がありました。「ラオスとダンスと昆虫採集」なにが繋がっているのでしょう。

昆虫を見せ合う子どもたち

第3回:さまざまな〇〇とコミュニケーション

実施概要

実施日時2023年8月21日(月)
会場台場公園
参加者小学4年生から中学1年生 16名

活動の様子

第1回のゲスト講師であった小林真大先生がラオスからお友達のClil先生を連れてきてくれました。興味津々の子どもたちは真大先生の力を借りながらClil先生とコミュニケーションをとります。そんな真大先生,Clil先生と一緒に台場公園で昆虫観察が始まりました。草原ではトンボやバッタ,木陰では蝶やセミなど,たくさんの昆虫たちとコミュニケーションをとりながらキャッチしてはリリースをくりかえす子,宝物のように虫かごにいれていく子。「今日は昆虫採集はしない」「見ているだけ」の子。「今日は体力を温存したい」と自分の体や心とコミュニケーションをとっている参加者もいました。

1時間ほど昆虫採集をしたあと,港陽小・中学校に移動して,真大先生,Clil先生からラオスの子どもたちの様子について動画を交えて紹介がありました。ラオスでは昆虫が日本よりも身近で,子どもたちはさまざまな昆虫と遊んでいるとのことです。都心部以外では道が舗装されておらず,雨季ではどろどろになる足場の悪いところを進んでいくこと,それによって体がつくられていくことなど多方面からラオスを紹介くださいました。子どもたちからも活発に核心をつく質問がでます。「ラオスで最も危険な生き物はなんですか?」「昆虫採集のときに,ダンスをしていてよかったなと思うことはありますか?」。両先生から「ダンスをやっていると,自分の体が今どんな状態かに意識を向けて把握することができる。自分の体を知ることができるので,昆虫採集のときにどう動けばいいかわかる。特にラオスでは山道や足場の悪いところで採集することが多いので,そのような場所でどうバランスを保つのかはダンスに通じる。他にも,雲が動いているからそろそろ雨が降りそうだなど,あらゆることに意識を向けることができるようになる」との回答をいただきました。「ラオスの子どもはどうやって遊ぶのですか?」という質問には、「ラオスでは都心部以外はテレビやゲームはそんなにないので,周りの山や川にあるもので体を動かす活動をすることが多いこと,また,家族の仕事を手伝うことが多く,4歳で牛の世話ができるようになったり,5,6歳で狩りに出るようになったりすること」を教えてもらいました。そのような環境によってラオスの子どもたちの体はつくられていくのですね。

「日本の子どもたちも体を動かしてみよう!」ということで,学校の体育館を借りて,体の動かし方を真大先生とClil先生から教えてもらうことにしました。まずは,真大先生とClil先生の普段のストレッチが紹介されました。一つ一つ体のパーツを動かして,最終的にすごい技を見せてくださいました!

その後,子どもたちもストレッチ。首,肩,腰,膝と,それぞれに意識を向けてそのパーツだけを動かすことはなかなか難しい…。その後は三転倒立などやりたい技を先生の補助によってチャレンジしていました。

最後にClil先生からラオスのもち米がふるまわれました。昆虫採集の際など,持参したもち米ごはんをおにぎりのようにして食べるとのこと。ちょうどお昼前の子どもたちもラオスの流儀でお米を握っていただきました。日本のお米よりおいしいと何度もおかわりする子どもたちもいました。

今回のテーマは「虫と〇〇とコミュニケーション」。昆虫採集はもちろんのこと,専門家の方の動きをみたり,自分の体と心の状態を観察したり,さまざまな〇〇とコミュニケーションをとりました。科学者の基本はデータの収集と観察(=コミュニケーション)です。収集したデータをじっと見つめ,どういうことかなと考えてコミュニケーションをとってみてください。最後は,参加者の中でラオス語での「ありがとう」を調べてきてくださった子がいたので,みんなで先生方にラオス語でお礼をいい,「達人証明書」の授与式を経てプログラムは終了しました。

台場公園で昆虫観察をする様子
ラオスの様子を小林先生・Clil先生から聞いている様子
虫を集める様子
2人の先生のストレッチから体の使い方を学ぶ

https://youtu.be/3KSNczugSO0

参加した子どもたちからの感想(一部抜粋)

・昆虫をかわいく思えた!(小5・男子)

・うまく昆虫採集するためには自分自身のことをよくわかっておくことが大事(小5・男子)

・体がむちゅうになっていると,頭で何かをひらめくことがわかった(小5・男子)

・つかれるとねむくてなんも考えらえれなくなる。昆虫採集をうまくするためには自分の体と話し合うことが大切だと思う(中1・女子)

プログラム後も昆虫について学びを深めてスライドや絵を提出してくれる参加者もいました。

参加者が描いたトンボ

保護者からの感想(一部抜粋)

・教えて頂いたことは、教科書や塾では学べないことだったように感じます。(多くの)子供たちが大好きな虫・虫捕りを入口として頂いたものの、本当に考えを巡らせるべきことはその向こうに多く用意されていて、子供から又聞きではあるものの、深い活動だったのではないかと感じました。 ゲストの先生から、アフリカの話を聞けたことも、普段そのような機会もないので大変貴重な機会であったと思います。 港区は「自然がなくて可哀そう」等と他所から色々と言われますが、区がそのことをきちんと認識し、場を用意して下さることに感謝しております。また、そのように他所から見える港区の中にも、自然を感じることができる場所はちゃんとあるのだと知り、自分たちが住んでいる港区がますます好きになりました。 毎回高橋先生から頂くフィードバックのメールからも、先生方の情熱が感じられ、この会に参加できたことを大変有難く思います。疲れたニュースばかりの日々で、今を生きる子供たちも大変なことが多いな~と思いますが、このような熱意ある大人の方々と触れ合うことが実は一番の学びになるのではと思います。 願わくば来年も開催頂き、来年もぜひ参加させて頂きたいです。 ありがとうございました。(小4男子・保護者)

・今回は貴重な機会を与えていただきありがとうございました。最終日戻ってからラオスの子供たちの生活について自分から話してくれました。
昆虫のことしか考えていなかった息子ですが、昆虫を通して視野が広がったのかなと思います。他の小学校の参加者の方や講師の先生方などと交流持つことが出来良かったと思います。また機会がありましたら参加させていただきたいと思います。(小5男子・保護者)

・そもそも昆虫が大好きで、バスを待っている間、図書館の帰り…いつでもフーッとその場を離れて虫のほうに吸い寄せられていく子です、近所には原っぱがあまりなく、バッタをたくさん捕まえられたのが楽しかったようで、帰宅してからも図鑑などでたくさんバッタを調べていました。自由研究は、毎年植物などがテーマで、今年は苔を(昨年の秋冬から)ずっと観察したり実験したりしていますが、光合成の量をみながら、コケの状態を擬人化して表現したり、グラフをみながら、なぜこうなのかとストーリーを考えたり、と、プログラムに参加した後は、より、イキイキと楽しそうに取り組んでいるようにみえます。とにかく好きなことしかしない、処理速度が遅く、書くなど苦手なことがあると癇癪を起こす…扱いにくいような、難しいところのある愚息ですが、去年参加した、雨の量を測るもの、今回参加した、昆虫とコミュニケーションなど、こういった学校以外の学びの場(テストや、書かなければならない、という強制的に書く場面がほとんどないもの)は、いきいきとのびのびと癇癪をおこすこともなく、取り組んでいて本人も「また参加したい!」と話しています。折に触れて「ぼくは学問は好きだからたくさん学びたいけど、勉強みたいに強いられて明日までにこれを終わらせるとか書いてくるというのはできないんだ。早く書けないのに、出さないと怒られるのはストレス。」と話しています。学校ではなかなかできない様々なテーマの「学びの場」また是非、何かありましたら参加したいと思っています。本人は動物や博物館も大好きなので「博物館や動物がテーマのものがあったらやってみたい」と話しています。
マイペースでこだわりが強く、学校の勉強はほとんどできない(校外学習や読書と自由研究だけが大好き)という愚息にとって、学びの達人プロジェクトは非常にありがたいです。今後とも機会があれば参加させていただきたいです。(小5男子・保護者)

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