プログラムの概要
読書感想文は,読むことと書くことがセットになっています。読むのも書くのもなんだか苦手だな…と感じる方もいるかもしれません。でも,読書感想文をつくるのは,実はテレビや動画をみて感想を言うのと同じ。けっこう楽しいイベントなんです。
今回のプログラムではみなさんが持ってるタブレットを使って,読書感想文を書く方法を紹介します。読むこと書くことが苦手でも大丈夫。本の中からみなさんだけの楽しいポイントを見つけていきましょう。
実施概要
実施日時 | 2023年6月7日〜6月28日(全4回) |
会場 | 港区立みなと科学館 |
参加者 | 小学4年生から中学2年生 18名 |
第1回:読書感想文と仲良くなろう
実施概要
実施日時 | 2023年6月7日(水) |
会場 | 港区立みなと科学館 |
参加者 | 小学4年生から中学2年生 15名 |
子どもたちの活動の様子
今回のテーマは「読書感想文と仲良くなろう」です。
読書感想文を分解すると「読書(読む)」「感想(考える)」「文(書く)」。
この3つで一番重要なことは…?どれも重要であるのですが,一番時間がかかるのは「感想(考える)」です。「読む」「書く」はICTを使って作成できますが,「考える」はどうしても自分の頭でやらなくてはいけません。考えるためにまず実施したのは「飲料感想文」の課題。みなさんの前に出てきた飲み物12種類,何か好きなものを飲んで「おいしい」以外の感想を一言!俄然元気になる子どもたち。「しっとりたとした甘さ」「ほっとしてリラックス」「脳にあたって集中力が回復!」「本物じゃない気持ち悪さ」「水素の味」など,いろいろな感想がでてきました。
飲み物の次は「動画感想文」。感想をいうためのコンテンツはなんでもよいのですね。動画をみて,それぞれがそれぞれのタイミングで感想を呟きます。感想文を書くためにはまず感想を持つことが大事です。感想は頭の中にきっとそれぞれあるのでしょうが,それを言語化するためには少し練習が必要です。一番の練習は,同じものを見たり聞いたりした人の感想を聞くこと。「そういう言い方があったんだ」とモデルになる場合もあれば,「ぼく(わたし)はそうは思わない」と考えを深めるきっかけにもなりまね。
今回の宿題は,「夕飯を食べたり飲み物を飲んだりしておうちの人の感想を伝え合う」です。おうちの人と自分とでは感想がどのようにちがうのでしょうか。
第2回:タブレットを使って読む!
実施概要
実施日時 | 2023年6月14日(水) |
会場 | 港区みなと科学館 |
参加者 | 小学4年生から中学2年生 14名(オンライン参加1名) |
子どもたちの活動の様子
今回は、先週の宿題「おうちの人の感想聞いてきた?」からスタートしました。「から揚げを食べて“甘くて酸っぱいたれがおいしい”とお母さんが言い,ぼくは“にんにくがきいてておいしい”と思った」「ぶどう色の飲み物,お父さんは“いろんな味”,わたしは“りんごみたいな味”」「お母さんはビールとコーヒーしか飲まないから同じもの飲めなかった」など,いろいろな経験をしてきたようです。ここでのキモは,『同じものを食べたり飲んだりしても,感想(思ったこと・感じたこと)は違うということ』そして,『思ったこと・感じたことが同じであっても,言葉に表す方法がちがうということ』ですね。
前回もみた動画「ぞうのたまごのたまごやき」もう一度見て「動画感想文を書く」ミッションをやってみました。同じ動画を見ても,心に残った場面はさまざま。「歌が楽しくて踊りだしそう」「ゾウはたまごを生まないということに最後気づいてびっくり」「ゾウはたまごを生まないよ!はあおっている」「でも最後ゾウがたまごうんでたよ!」など,いろいろ感想が出てきました。
その後,ちょっとだけ,講師から感想文のコツを伝授しました。自由に感想を出すことができる子もいれば,「自由に」と言われるととまどってしまう子どももたくさんいます。そういうときは,考え方のコツをいくつか使ってみるとよいです。子どもたちに教えたのは次の2つです。
1.物語に自分がはいりこむ
2.物語の内容(教訓:言いたいこと)を自分の経験にひきつける
いよいよ読書感想文を書いてみました。芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を自力で読まずにタブレットを使って読みます。iPadで読み上げる方法はいくつかありますが,今回はWordアプリとブックアプリでの読み上げ方法を紹介しました。動画や読み上げを使って読む経験をした子どもたちは,「自分で読んだほうがいい」「聞いたほうがいい」「動画がいい」と感想はさまざまです。内容は同じで入力方法がちがうだけ。違うやり方をやってもよいのです。自分の好きな,得意なやり方を見つけて学びの達人をめざしましょう!
今回の宿題は,「蜘蛛の糸」の感想を書いてくることです。自分が物語にはいりこむのか?物語の教訓を自分にひきつけるのか?みなさんはそれぞれどのように物語とむきあってくるでしょうか。
第3回:タブレットを使って書く!
実施概要
実施日時 | 2023年6月21日(水) |
会場 | 港区みなと科学館 |
参加者 | 小学4年生から中学2年生 13名 |
子どもたちの活動の様子
「読書(読む)」「感想(考える)」「文(書く)」の,今回は「文(書く)」の回です。
書くときの1番の悩みが「何を書いたらいいかわからない」。でもみなさん,そもそもおしゃべりが得意ですよね。おしゃべりした内容を文章にしていけばいいのです。
まずは書くときのちょっとしたコツを伝授しました。書くときはいきなり原稿用紙に書くのではなく,「何を書くか考えてメモを作る」ところからはじめます。メモをつくっていると,考えが深まったり広まったりもします。メモを作って文章を考える流れの例として,研究室のスタッフのOさんに「アイス感想文」をつくってもらった過程を紹介しました。Oさんは学生時代に読書感想文のコンクールを総ナメした(?!)実力の持ち主。彼女のすごいところは,アイス一つでさまざまな感想がでてくるところです。アイスから「注意されても聞かない人はどうすればいいか」まで話題がとんでいきました。アイスのパッケージの注意深い観察と日常の経験との結びつきがうまくいっている事例です。
次は子どもたちの番です。「蜘蛛の糸」の感想文を書くためのメモを作成してもらいました。みなさんかなり集中しており,学びの達人プロジェクト史上,最も長時間静謐が保たれた時間でした。メモはアナログなポストイットでも,デジタルのマインドマップでもどちらでもいいですね。
今回の宿題は「『蜘蛛の糸』で作成したメモをもとに,感想文を書いてくる」です。気持ちや考えを伝えたい学びの達人候補の参加者のみなさんはそれぞれどんな感想文をかいてくるでしょうか。
第4回:タブレットを使って読書感想文マスター!!
実施概要
実施日時 | 2023年6月28日(水) |
会場 | 港区みなと科学館 |
参加者 | 小学4年生から中学2年生 16名 |
子どもたちの活動の様子
前回に子どもたちが作成した「蜘蛛の糸」の感想文を書くためのマインドマップを共有しました。
おしゃかさまが糸を切ってしまった場面が印象に残った子,「蜘蛛の糸は極楽のものなのに自分のものだと勘違いした」という考えを出した子,カンダタの運動神経や体力のすごさに言及した子,蜘蛛の糸の強度に言及した子,最初と最後の情景描写について考察した子,同じ「蜘蛛の糸」を読んでも,できたマインドマップはさまざまで一つとして同じものはありませんでした。これが,みんなのそれぞれオリジナルな感想文に繋がります。
マインドマップから感想文にするときのポイントは,「自分が『なぜ』『どうして』とひっかかったところを掘り下げる」「いかに自分の経験や自分自身の考えに引き付けられるか」です。講師から,「カンダタは蜘蛛の糸をのぼっていたけれどみんなはどう?のぼり棒を極楽までのぼれる?」「おしゃかさまはカンダタに期待して裏切られたという感想があったけど,みんなもおうちの人に期待されたのに裏切ってしまったことない?」「蜘蛛の糸,実際はどのくらいの強度だろう?」など,物語から離れて自分の経験にひきよせる例をいくつか見せました。
さて,ここでまた「読書(読む)」「感想(考える)」「文(書く)」をふりかえります。「読書(読む)」は動画を見たり,音声読み上げの機能を使ったりする,「文(書く)」はタイピングや音声入力で実施できます。では「感想(考える)」はどうでしょう。ここで今はやりの生成系AIであるChatGPTをご紹介。「ChatGPT,つまりAIはみんなよりよい読書感想文を書けると思う?」との問いかけに,ほとんどの子が「Chat GPTのほうがうまくかけると思う」とのこと。さあ、実際はどうだったでしょう?
最後に,読書感想文の書き方をふりかえり,大事なことは音声読み上げを使ったり音声入力を使ったり等のいろいろな機能を知ったうえで,自分が得意な方法を選ぶことと伝えました。iPadアプリでマインドマップを作成してもいいし,アナログのポストイットを使ってもいい。自分で読んでもいいし,動画を見てもいい。自分の得意な方法を知ることが大切ですね。
読書感想文マスターに少し近づいたみなさんに「学びの達人証明書」を授与してプログラムは終了です。
参加した子どもたちからの感想(一部抜粋)
・なぜ、どうしてと考えることが大切とわかった。(小6・男子)
・感想文を書く前にメモを書くと上手くいくということがわかった。(中1・女子)
保護者からの感想(一部抜粋)
・習い事はたくさんしているが、じっくり物事について考える、感じる習い事はあんまりなくて、プログラムを通じて、とても良いと思います。またぜひ参加させたいです。(小4・女子)
・家でも新商品のポテトチップスをみんなで食べて感想を言いあったりしました。スパム味で、父VS子で好みが真っ二つに。その時、「そういえば子ども達はスパム自体食べた記憶がない(実際は多少食べているのですが)」という事に行き当たり、経験が好みとリンクするのかもしれないね、と話し合いました。(小6・男子)
・新しい考え方や気づきを貰える機会になっているようで、子供も楽しそうに参加させて頂いております。(中1・女子)