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港区学びの達人プロジェクト

2022 ABLプログラム「石ってなあに?〜“定義する”を学習する~」(全3回)

プログラムのねらい

今回のテーマは、みなさんの身近に転がっている石。石ってかたい?石って光る?みんなが「よい」と思う石はどんな石?そもそも「よい」って、そして「石」ってなんだろう?そんないろいろな言葉を「定義する」ことを通して、科学的な定義の重要性、日常生活のちょっとした言葉の定義のあいまいさにふれます。自分の「よい」と他者の「よい」の定義のズレから対話の重要性にせまります。実は、科学的な定義はいつもかっちりしているわけではなく、あいまいなこともあるんです。あいまいさを楽しむ態度を涵養することも目的の一つです。

実施概要

実施日時2022年11月2日〜11月26日(全3回)
会場国立新美術館・みなと科学館・オンライン
参加者小学4年生から中学3年生まで 12名

第1回:美術館で「よい石」を探そう

実施概要

実施日時2022年11月2日(水)
会場国立新美術館
参加者小学4年生から中学3年生まで 10名

子どもたちの活動の様子

今回の学びの達人は、テーマは「石」。国立新美術館からスタートです。

「石の上にも三年」「雨だれ石を穿つ」「石橋をたたいて渡る」など、「石」を使った慣用句の意味を聞くと、子どもたちは、ハキハキと答えてくれます。一方で「ここに出てくる“石”ってどんな石?」「そこらへんに転がっている石をよく観察したことある?」との問いかけには、とまどい気味です。

美術館にも石があるんだよ、どんな石が展示されているのだろう。国立新美術館・教育普及室長の真住貴子先生から開館15周年記念の「李禹煥」展(https://leeufan.exhibit.jp/)について伺ってみました。李さんのアートは「もの」派といわれるもので、「もの」に手を加えずそのままを使うこと、石も「もの」として展示されていること、どの石も適当に選んでいるのではなく、李さんがこだわっていることなど興味深い情報をたくさん教えてくださいました。少しのレクチャーを聞いてさっそく「どんな石があるか見に行こう」「好きな作品を探しておいで」と展示室へ向かいました。展示室の中で、「これなら自分でもつくれそう」などと初めて会った参加者同士で感想を言いあったり「さっきの作品は何でできていたのか、もう一回見に行こう」と戻ってみたり、好きな作品を一人でじっくり鑑賞したり、疑問に思ったことをスタッフさんに聞いたり、自分の発見を伝えてみたりと、それぞれが思い思いに楽しんでいました。研修室に戻ってから、どの作品が好きだったのか、どうしてそれがよいと思ったのかをそれぞれ伝えてみんなで共有し、真住先生からも作品の詳しい解説や背景情報の説明をいただきました。自分の視点で見た後で、他の人の感想や詳しい解説を聞くと、もう一度見に行きたくなっちゃうねなどと言いながら今回のプログラムは終了です。

次回の宿題は、「自分が一番よいと思う石を探してくる」です。子どもたちがどんな石を探してくるのか、楽しみです。

李展を鑑賞する子どもたち
鑑賞後に感想を参加者同士で共有している様子

第2回:一番よいと思う石を探してきて!

実施概要

実施日時2022年11月16日(水)
会場オンライン
参加者小学4年生から中学1年生まで7名

子どもたちの活動の様子

今回の宿題は、身の回りにある「自分がよいと思った石」を探してくること。子どもたちは、福井の海で拾った独特の形や色がすてきな石、アメリカの校庭で拾った中がきれいな石、建物に貼られた「定礎」の石などよい石をたくさん見つけてきました。「忙しくてできなかった~」などと言う子も家の中を探すと「石でできたインテリア」「外で拾ってきた表面と外の色が違う石」などを見つけてきて見せてくれました。

さて、みんなが探した「よい」石の「よい」ってどういうこと?聞くと「きれい」「つやつや」「形がかっこいい」などの意見がでてきました。「かっこいい」「きれい」ってどういうこと?「よい」にも人それぞれあって、自分の「よい」と他の人の「よい」は違うこともあるね、それぞれの「よい」を認め合おうといいね、と話しました。「よい」は一つの言葉で定義できないようです。

でも、「定義」しないとコミュニケーションがうまくいかないこともあるようです。たとえば「りんご」を定義してもらうと、「赤くて丸い果物」との答え。でも別の参加者が「赤くないりんご」、「黄色いりんご」を見せてくれたました。あれ?同じりんごでないようです。その他に「犬」や「美術品」も定義しました。「美術品」の定義については前回の国立新美術館でお世話になった真住先生のアドバイスも。「みんなが“価値がある”と思っていたら美術品になりえる」のお話に、参加者の中から「みんな」ってどのくらいを指すんだろうとの発言もありました。

さて、ここから本題の「石」。石って何だろう?ウィキペディアで調べてみたら(参加者のみなさんもささっと調べてくれます)「岩より小さく、砂よりも大きい、鉱物質のかたまり」との答え。石を小さくすると小石、砂利、学術的には「礫(れき)」と言うそうです。

そしてここから次回への宿題です。「石と岩のちがいはなんだろう?」「石って生きてる?」を考えてくることです。次回はそれぞれの「よい石」を実際にみんなに見せるために、科学館に集合です。

前回の李展をみて、石を積んでいるアートを発表
自分の良い石をみせあう様子

第3回:定義すること・あいまいなこと

実施概要

実施日時2022年11月26日(土)
会場みなと科学館
参加者小学4年生から中学2年生まで9名

子どもたちの活動の様子

今回は、それぞれの「おすすめの石」を見せ合うことから始めました。前回にオンラインで画面越しに見せ合った時とは違って、触った感触や重さがわかり「予想より重くてびっくりした」「すべすべ」「よく見たらここは…」などと、他の子どもたちが持ってきた石を楽しむ様子が見られました。地学が専門のみなと科学館の谷口健太先生から「これは○○石」「砂がぎゅっと押し固められた石」「マグマがゆっくりかたまってできた石」などとすべての石に解説をもらいました。その後、石は身近なところにたくさんある、科学館の周りにも石がありそうということで、科学館の外に出て石を探しにいきました。また、気象科学館の中にも南極から持ってきた石や軽石があるのでそれも見に行きました。

たくさんの石を見たあとで、「石ってなあに?」をさらに考えます。専門家の谷口先生からのレクチャーがあり、科学的な「石」の「定義」、そして石と岩のちがいについて。石と岩は、礫と砂のちがいと異なり、大きさの明確な定義はないそうです!一説には「持ち上げられるもの」が石、「持ち上げられないもの」が岩とのことも。科学の世界でも物理量での定義をしていないことに驚く参加者のみなさんでした。

石の中にもいろいろな種類があるので、自分達が持ってきた石をじっくり観察することに。鉱物ハンマーで割ってもらったり、サンドペーパーで削ってみたりすることで、外と中身が違うことや光を当てると違う光を放つものもあることを発見しました。「石ってなあに?」「食べられる?」「光る?」など、石についての定義を再確認しました。(食べられる石もあるのです)

その後は「ちょっとだけ」の言葉の意味、定義を考えました。「そのオレンジジュース“ちょっとだけ”ちょうだい」と言われて、参加者のみなさんがそれぞれのカップに「ちょっとだけ」オレンジジュースを注いでくれました。その量が見事にバラバラです。「ちょっとだけ」は人によって違うんですね。でも「オレンジジュースを80mlください」と明確に定義して伝えることはあまりありません。それはどうしてだろう?とみんなで考え、コミュニケーションの難しさと、そこから対話が生まれるおもしろさについて議論しました。

美術館での石の鑑賞、よい石を見つけることから始まった「石ってなあに?」のプログラム。科学的にも日常的にも定義が必要なことと定義できないあいまいなことがあることを再確認しました。自分と他者の「よい」「ちょっとだけ」などの言葉の定義がちがうことに気づき、円滑なコミュニケーションのためにちょっとだけ努力する姿勢が身についたでしょうか。

自分の定義だけでなく、他者の定義も尊重できるような思いやりのある「学びの達⼈」に一歩近づいたみなさんに「達⼈証明書」を授与して今回のプログラムは終了となりました。

「おすすめの石」をみせあう様子
石をブラックライトや虫眼鏡で観察する子ども
オレンジジュースでみんなの「ちょっと」を比較している様子
みんなの「ちょっと」はどれぐらいだろうと考えている様子

参加した子どもたちからの感想(一部抜粋)

・私は鉱石のようにキラキラした石や独特な形、色などがある石が大好きです。感触がなめらかな石も好きです。(小5・女子)

・あいまいなことは必要なときといらないときがある。”定義する”ことの長所は、「完全かつ正確に伝えることができる」。短所については、「正確になるから楽しくない」。(小5・男子)

・”定義する”ことの長所は、「誰にも伝わる」。短所については、「創造力がいらない(料理の少々、適量のように)」。(小5・男子)

保護者からの感想(一部抜粋)

・みんなの石を見れたのが楽しかった!定義って意味がわからなかったし、難しそう、と思っていたけど、ジュースの例えがわかりやすかった。石とひとことで伝えることの難しさを感じた。美術館での時間も最高に楽しかったから記憶に残っている。家では、鉱石の図鑑をひっぱりだして、一緒に読み直したり、海でガラスと岩が混ざった石を一緒に見つけたりしました。(小5・女子保護者)

・美術館、オンライン、科学館と学ぶ環境を変えることがまず刺激になると思います。専門家の方に教えていただくのもよいですね。実は曖昧なことばかりであることを考えながら知る時間が持てるのは、決まった答えを学習するスタイルのなかでとても貴重。港区の施設を活用して、よく練られたプログラムと思います。私が参加したかったです!ありがとうございます。(小5・男子保護者)

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